わたしの理由ーーーー『邂逅地点』に寄せて
2023年5月27日
東京国際フォーラムAホール
Special Reading Live ”邂逅地点“。
これで、ソロアーティスト活動は一旦休止期間に入る。
わたしは、このライブで一区切りだと明言された日から、当日の自分の精神状態がどうなるのかが気になっていた。
わたしが想定していたシチュエーションは、アンコールの最後の曲が『Pleasure』で、「終わらない歌を歌おう」というフレーズを聴きながらタオルをぶん回すわたしは何を考えるのか、というものだった。
「終わるやんけ」と怒るのか、「終わらないよね」と嚙み締めるのか、感謝の気持ちしか浮かばないのか、初めて現場で泣いてしまうのか、はたまた、推しに依存していない今の自分は特に心が動かないのか。
最後は『Pleasure』だろうと思ったのは、過去のライブの構成を踏襲しそうだと考えたからでもあるし、優しい下野さんのことだから、「終わりじゃないよ」という希望を持たせてこの活動を結ぶだろうと思ったからでもあった。
でも、わたしは下野さんのことを全く分かっていなかった。
アンコールの最後に選ばれた曲は『I'm Home』。
「未来へ踏み出そう」と歌う、旅立ちの歌だった。
これで締めるつもりなんだと気づいた瞬間、血の気が引くような心地がした。分かっていたつもりだった彼の覚悟の強さを肌で感じて、もう戻れないのだという実感がやっと沸いたのだと思う。
一瞬も見逃したくなくてステージを凝視している間も当然に時間は経っていき、楽曲が中盤に差し掛かった頃、下野さんの声色にどんどん涙が滲んできた。
ラスサビはもうなんとか歌っているくらいだったけれど、最後、絞り出すように、でもはっきりと言い聞かせるように歌ってくれた
君が僕の 僕が君の
理由になる なれるだろう
というフレーズ。
これを聴いた瞬間、この7年間の思い出が走馬灯のように駆け巡った。
下野さんは、ずっとわたしの「理由」だったから。
受験勉強のモチベーションは「はやく大学生になって下野さんのライブに行けるようになりたい」だったし、
大学生になってからも、わたしは後ろめたいことがある状態で下野さんに会いたくないので、ライブ前に課題を全て終わらせていた。
くたくたになってもほぼ毎日アルバイトしていたのは下野さんに会いに行くためでしかなかったし、就活は、ライブに行けるように土日休み且つ有休が取りやすそうなところしか受けなかった。
採用1年目の年、暇すぎてサボりそうになったときは「この姿、下野さんに見られても平気?」と自分に問いかけて、マニュアルを読んで勉強する時間に切り替えたり。
最近は、ライブまでに利息を払っていない人間になっておきたくて(笑)、ちょっと無理して奨学金を全額繰り上げ返済したりもした。
下野さんを理由に頑張ってきた数々の思い出が一気に蘇って、懐かしさと寂しさに襲われたけれど、すぐに幸福感がそれを上回った。
なぜなら、わたしは、わたしたちファンが彼の「理由」になれている自信があるからこそ、この歌詞が響いたのだと思ったから。
何度も「恩返しがしたい」なんて言ってくれて、いつも「ありがとう」「大好き」と伝えてくれて、信じられないくらい優しい目で客席を見渡してくれたおかげで、わたしは彼の紡ぐ言葉を其のまま真っ直ぐに受け取ることができる。ファンとしてこんなに幸せなことが他にあるだろうかと思うと、胸がいっぱいになった。
つまり、わたしの事前予想は完全に外れた。そもそもアンコールの曲が違ったし、わたしは怒るでも泣くでもなく、この7年間で与えてもらったものの大きさに改めて気づいて、幸せで満たされて終わったのだ。
正直、今はとってもとっても寂しくて、もう暫くあの場に行けないなんて信じたくない。でも、楽曲たちとそれに付随する記憶はいつまでも残るし、わたしたちには今日まで貰った愛に溢れた言葉が沢山あるので、それらをお守りにしてこれからもなんとか生きていこうと思う。
ソロアーティスト・下野紘さん。
わたしの理由でいてくれてありがとう。
そして、めっちゃくちゃ幸せなファンでいさせてくれてありがとう。
どうか、踏み出した先の未来が世界一明るいものでありますように!